2003 RTC RALLY in SHINTOKU

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全日本ラリー選手権参戦レポート

2003全日本ラリー選手権2輪駆動部門参戦レポート

2003全日本ラリー選手権2輪駆動部門ナビゲーター参戦レポート 2003 RTC RALLY in SHINTOKU

全日本ラリー2駆部門 第8戦
2003 RTC RALLY in SHINTOKU 
2003年10月11日(土)~12日(日)

 待ちかねた北海道のラリーです。
  前回のモントレーで群馬の星と散ったRX-7に代わり、今回からスターレットターボの登場です。
  まあ、残り2戦はダートなので、スターレットターボでエントリーするのは予定通りではあったのですが、上原さんにしては意外なFF車となるので、なかなか楽しみです。スターレットターボは、私が九州地区戦から全日本に上がったときに乗っていた車なので、とても愛着があります。おまけに、このスターレットターボはそのときのドライバーが乗っていたマシン(私が乗っていたときと同じマシンではありませんが)で、信頼性も高いです。
  スターレットは意外にリアが出るので、FFとは言え上原さんに向いたマシンだと思うのですが・・・上原さんは、
「ダートならどんな車でもOKだ!!駆動がどっちだって問題ない!!」
と、はりきっております。まあ、それは去年のひえつきや大分でも実証済みなのですが(笑)
 さて・・・そろそろこの呪いのシーズンを良いシーズンに変えるために、優勝するぞ!!

  

 今回のラリーはいつもとちょっと違うタイムスケジュールで、土曜日の午前中にレキがあり、その後夕方からギャラリーステージ、そして翌日の日曜日に残りのステージ、という構成になっています。金曜日はいつものごとく、午前中はばたばたと仕事をして、午後から慌てて会社を出て、北海道へ向かいます。ああ、サラリーマンラリーストって辛い・・・・。

10月11日(土) Section1
SS1(約2.44km)ギャラリーステージ

 いきなり1本目からギャラリーステージです。この林道は初日に2本、翌日に2本の計4本で使います。
 この道は結構危険な個所があり、下手するといきなりSS1からリタイヤ、なんてことにもなりかねません。
「まずは様子見で行かせろよ」
「上原にはくれぐれも抑えるように言っとけよ!」
 スタート前に、いろんな人から念を押されます(笑)
 しかし、私はここで断言しましょう。
「上原さんを抑えることは、私にはできません!」
 あの、上原さんと長年コンビを組んでいた枝光ナビだって、トリプルコーションを3回叫んだほどなのです。しかもそれでも、上原さんは全開でコーナーに突っ込んでいきました(涙)。そんな上原さんを、この若輩者の私が、抑えることなんてできません。それより何より、私が抑えたくない(笑)。上原さんのラテンの走りを楽しみにしているのは、誰よりもこの私なのです。ラテンじゃない上原さんなんて、上原さんじゃない!しかも今回はダート。好きに走らせないで、どうしましょう。
 前置きが長くなりましたが、このSSスタート前に私が言った言葉は・・・・
「さて。早速SS1からギャラステです。・・・・見せてやろうじゃないの!ギャラリーに!!ただし、注意してね」(ちょっと弱気)

 ギャラリーコーナーは、スタート後わずか2コーナー目のところに設定されています。奥の方にはプレスも多くいるようです。
「レキでもかなり滑ったけんね、あの2.5Rは注意しようね。10秒前・・・3・・2・・1・・スタート!!」
 ガラガラガラガラガラガラ!!!
 スタートしていきなりの大音響です。石やら砂やらがアンダーガードに当たる音で、車内はものすごい音に包まれます。インカムをつけてはいますが、ナビも大声でノートを読み上げなければいけません。「4R!3L!ストレート100!!ロング4Rクローズコーションッ!!」
 ああ・・・・・素敵!!素敵すてき!!ダートってやっぱり最高!!これよ、これ!!最高!!

 しかし、喜んでいられたのも束の間、スターレットは非常に不安定な挙動で、まったくまっすぐ走りません。
 130mのストレートなんて、ひたすらタコ踊りしながら走っています。しかもその間、左側は土手を走りっぱなし。っていうか、またナビ側からですか(涙)
 上原さんは暴れるスターレットを押さえつけてコーナーを曲がっていきます。ひとつコーナーを抜けるたびに、ノートを読み上げながら私は
「ああ、とりあえずここでは落ちなかった」
と、ほっとしつつ、楽しくて仕方なくて、顔が勝手ににやついてしまいます(笑)
 もっとも注意していたコーナーもなんとか抜けきり、暴れまわるスターレットに振り回されながら、ゴール!!
「ゼッケン7っ!!ベスト何秒っ!?」
「えーと、13秒!」
「13秒か・・・俺ら何秒だった?」
「ええと・・・あれ?うちって12秒7だよ。じゃ、うちがベストってことじゃない?」
「おおっ、やった!!」
 あんなにムダがあってベストだなんて・・・上原さんって一体どういうドライバーなんだろう。
 それにしても、楽しかった。興奮と喜びと恐怖で手が震えています(笑)

SS2(約2.44km)ギャラリーステージ
 さっきと同じ林道で、ギャラリーステージです。スタート地点まで戻ってくる間に2人で話し合ったことは、
「あの走りじゃ、ゴールまでいられない」
 ということで、ここはちょっぴり大人になることにしました(笑)。まだラリーは始まったばかり。こんなところでリタイヤするわけにはいきません。勝負になるのは、明日のロングSS。ここはひとつ大人になって、『まず今日、完走する』ということを目標にしました(笑)
 さて、SS2。日も暮れてきて、ライトをつけてのスタートです。
 3・・・・2・・・1・・・・スタート!
 さっきより抑えた走りの上原さん。相変わらずリアは出ますが、さっきよりはずっと安定しています。ただ、前ゼッケンの上げた砂ぼこりにライトが反射して、ものすごく前が見えにくくなっています。こ、怖い・・・・。
 上原さんは目の前が真っ白であろうとも、私のノートを信じてひたすら突っ込みます。
 確かここ、ガードレールないコーナーがあったよな・・・・私も自分の身の安全のために、必死でノートを読み上げます(笑)
 あちこちでプレスの焚くフラッシュが光り、とても気分がいい!いけ、いけいけー!(でも落ちないでね)
 下りの左コーナーを抜けて・・・・ゴール!
 ぶはー、なんとか今日のステージは生き残った!!
「ゼッケン7番っ!ベストはっ?」
「13秒8、ベストです!」
 お、うちがベストか!?どうやらみんな、暗くなったためかタイムダウンしたようです。
 ということで、なんと、今日の時点でトップです!たった2本しか走ってはいないけれど、幸先いい!!

 これで本日のスケジュールは終わり。明日の準備をしてから気分良く宿に戻り、軽くビールを飲んで、明日に向けて体を休めることにしました。
 ああ、疲れた・・・横になった途端、睡魔が襲ってきます。あー、このね、眠りに落ちる瞬間がね、最高に気持ちいいのよね・・・

 ジリリリリリリリリリリリリリリリ!!

 か、火災報知機!?な、なになになになに!?
「ウーウー!!ただいま、火災報知機が動作しました、現在確認しておりますので・・・」
 ああ、びっくりしたあ・・・。心臓がバクバクいっています。もう、目が覚めちゃったよ・・・。廊下に出て確かめると、どの部屋からも人が顔を出しています。みんな眠そうな顔で、いかにも飛び起きてきたという感じです。でも、煙もないし、誤動作かな。とりあえず大丈夫ね。
「なんか、誤動作だったみたいよ。何もなかった」
 うっ・・・上原さん・・・・・・気持ち良さそうに寝てる!?
 おそろしい、さすがだ・・・。あの大音響で目を覚まさないなんて。上原さんってやっぱりすごいかも。
 この後も、火災報知機の誤作動を知らせるアナウンスと、中国語での通知アナウンスが何度か流れましたが、その間も上原さんは目を覚ますことはありませんでした(笑)

10月12日(日) Section2
 今日は、昨日使わなかったロングの林道2本を3回ずつ、そして昨日と同じギャラリーステージを2回、走ります。勝負は本日前半に使われる、2本のロングSSになります。ここでどれだけタイム差をつけられるか・・・・。しかし、こちらの林道はストレートが多く、パワーのあるマシンが有利になると思われます。うちは北海道への移動の前日に出来上がったマシンで、まだ詰めきれていない部分もたくさんあります。昨日の林道は短いSSだったので、暫定トップとはいえ、ほんの数秒しかアドバンテージがありません。タイム差をつけるどころか、ここで他のクルーに大きく離されてしまう可能性もあります。
 よっし、気合入れていくぞっ!!

SS3(約8.13km)上りロングSS
 こちらの路面は固くしまっていて、比較的走りやすい良好ダートです。
「途中に橋があって、右に曲がるコーナーがあるSSね。5L、橋3Rコーションのとこだから」
「おう!」
「よし。がんばろう!まずは大人の走りで様子見ね」
「おっし!」
「3・・・2・・・・1・・・・・スタートっ!!」
 大音響の中で声を張り上げ、ノートを読み上げます。
 しかし・・・ここ、6とか5のコーナーが多くて、非常にノート読みづらい!!
 私は膝の上にノートを置いて読み上げるのですが、1つ1つのコーナーを見るのではなく、いくつかずつ覚えて、前を見ながら読み上げるやり方です。また、コーナーがどんどん出てくる林道などでは、顔の上げ下げは無理なので、下を向いてノートを見つつ、体にかかるGで判断して読み上げたりもします。
 まあ、どのナビもこういったやり方を組み合わせてやっていると思われますが、そうやって下を向いているときにへんな挙動があると、それでコーナーが分からなくなったり、6などの緩いコーナーと認識してしまったりしてしまうことがあるので、この林道のように、ストレートと緩いコーナーの組み合わせが多いと、ナビにとっても非常に難しいコースになるのです。
 特に上原さんのような、ストレートをまっすぐ走らないドライバーだと、その難しさはさらに増します(笑)。
 しかし上原さん・・・コーナー抜ける間、ずっとナナメ(笑)。ギャラリーに見せられないのが残念です。
 ゴール手前の、橋を抜けての直角右コーナー。正面にプレスの人がたくさんいて、ばしばし写真を撮られているのが分かります。このコーナーを抜けると、突然道が変わって、狭くなって荒れてきます。
「道荒れてる!しっかり!!・・・あと少し!5R先でゴール!最後までふめーーー!」
 ぶはー、なんとか8km刺さらずにゴールしたあー。
 タイムを見ると、まだトップを守りきっているようです。吉井選手がベストを出していますが、大きく離されたわけではないのでよしとしましょう。
 抑えた走りではあったけど、その分安定してるし、いい感じ。焦りは禁物!

SS4(約6.24km)下りロングSS
 さあ、ついに上原さんお得意の下りのダートです!
「俺、下りのダートってすっげえ好きなんだよ」
「あたしも好きなのよね(笑)これぞラリー!って感じだよね。どうぞ、思う存分、いっちゃってください!」
「おう!」
 3・・・2・・1・・・スタート!
「5L、ストレート100・・・あれ?」なんか違う。 あ!
「なんか違うぞ!」
「わかった!ちょっと間違えた。次からね。5L、ストレート100・・・・」
「おう!ここだここだ!」
 あー、見通しが良かったから助かった・・・・いかん、しっかりせねば。
 最初で失敗してしまったので、気を引き締めて集中してノートを読みます。
 しかし、下りのダート最高!!上原さんの一番いいところが出ています。ノートを読み上げるのも楽しい!
「6Rアンド4Lで、ゴール!」
 うっひょー!楽しかったあ!さあ、タイムは?
 みんな、5分ちょっとのタイムを出してきています。大庭選手が良いタイムを出しているようです。ええと、うちは・・・
 え!54秒?ちょ、ちょっと・・・・うちってすごく遅かったの!?どうしよう・・・・
 一瞬思考停止しましたが、慌ててコントロールシートを見て計算します。違う、これ、分違いだ・・・・うち、4分だ!
 そう答えが出た途端、目の前のボードに、「4‘54’」と書き込まれるのが見えました。
「うわっ!やたっ!うち、分違いじゃん!!」
「おおーっ!」
「すごーい!さっすがダートマスター!!素敵!!」
 いい感じ!乗ってきたぞー!去年のひえつきを思い出します。楽しい!楽しい!

SS5(約8.13km)上りロングSS(SS3と同じ)
 先ほどの8kmロングSSの2本目になります。
 SSのスタート待ちをしていると、後ろゼッケンの岡田選手から、
「さっきさあ、すごい岩が出とったやろ!!バーストしたよ!」
と、話し掛けられました(右写真)。
「いや・・・そんなのなかったですよ」
「うん、なかったよー」
「え!人の頭ぐらいのでっかい岩が、ど真ん中に出てきとったよ!」
「なかったよ」
「なかったよねー」
(全員何かに気づく)
「・・・・お前か、上原!!」

 岡田選手は、以前にも上原さんが出した砂であやうくリタイヤしかけたという過去があり、本当にご迷惑をかけっぱなしです(笑)
 噂によるとこの岩で数人がバーストし、全車通過する頃にはきれいに砕かれてしまったそうです。
 後続ゼッケンの皆さん、ごめんなさい(笑)

 さて、気を取り直して、SSスタートです。
 ここはノートが難しい。タイミングよく読んで、上原さんの走りのリズムをあげられるような読み方にしなければ。
 3・・・・2・・・1・・・・スタート!
 集中してノートを読みます。さっきは今ひとつ、タイミングがうまくなかったから、今回こそ!!
 私はいつも、ノートを読み上げながら、いろんなことを考えています。
 ナビは、正確にノートを読み上げるだけが仕事なのではなく、ノートを読み上げるタイミングによって、ドライバーのリズムを作ることができると考えているからです。私のそういった試行錯誤がどれだけの成果となっているのかは分からないけれど(あるいは何の役にも立っていないのかもしれないけれど)、私の声の出し方、強さ、読み上げのタイミングが、きっといつか、ドライバーに伝わって、力になれるはずだと思うし、そういうナビになりたいからです。
 自分のノートのことだけでなく、上原さんの走りもしっかり見て、どういう読み上げをすべきかを考えます。
 上原さんは抑えた走りを心がけているけれど、その分じゃじゃ馬スターレットは安定した走りを見せ、着実にタイムを出す走りになっているようです。
 大人じゃん・・・・(笑)
 ゴール手前の、橋を抜けての直角右コーナー。あと少しだ。しっかり、しっかり!
 あと少し・・・・ゴール!!
「おーっ!」
 なぜかオフィシャルがどよめいています。??
「前分だ!速ええ!」
 私がラリコンのチェックボタンを押したタイミングでは、6分00秒。大庭さんのタイムは、6分04秒。そこまで見て安心していたら・・・
掲示板に、『5‘59’‘』の文字。
おおっ!また前分じゃん!!
「おー!やった!」
「もー、あなた素敵!!」
「ふっふっふ・・・君は俺の走りの虜さ、ハニー」
 相変わらずのおバカな2人です。

SS6(約6.24km)下りロングSS(SS4と同じ)
 さて、ラリーも終盤に入ってきました。ここからが問題です。
 既に2位の大庭選手とは20秒近い差がありますが、ロングのSSでは何があるか分かりません。刺さったりしてしまえば、あっという間に20秒、30秒はもっていかれてしまいます。こういうときに、変に守りに入った走りなんかをしたら、かえって危なくなってしまいます。大事なのは、自分のリズムを崩さないこと!
「うっし、へんに抑えたりしないでいこう。このままのリズムで、集中していこう!」
「おう!」
「ラテンよラテン!楽しく走るのよ! 3・・・・2・・・・・1・・・・・スタートっ!」
「5R、ストレート200、5L・・・」
「おおっ!もう合ってる!」
 いや・・・・そんなにミスを繰り返したらクビになっちゃうって(笑)
 上原さんはリズムよく走りますが、私は内心ドキドキしています。自分のノートでリズムを狂わせないように、上原さんが集中できるように・・・ノートを読み上げながら、いろんなことが頭をぐるぐる回ります。
 上原さんは完全に私のノートを信じて走っていて、緩いコーナーの進入にも迷いがありません。こ、これは責任重大だわ・・・・
 全体のスピードが上がったのか、スターレットは時折、じゃじゃ馬の顔をちらちらと見せ、ときどきヒヤッとさせます。
 な、なんとかゴール!
 ええと・・・タイムは・・・・・ラリコンの「4」という数字が目に入ります。うん、タイムはそう落ちてないみたいだな。
 他のゼッケンもタイムアップしてきて、4分台に入ってきているクルーもいます。う、追いつかれたか?
 もう一度自分のタイムを見ます・・・・え!? 4分46秒!?
「ベスト!」
「う、うそ!?うち、タイムアップしてる・・・絶対遅かったと思ったのに・・・」
「俺も(爆)」
 もう、信じられません。この人、どうしてこうもタイムアップするんでしょう(笑)

 ここで1度、サービスに戻ります。
 気分いいなあ~♪ やっぱり調子いいと景色のきれいさも違うね!
 などとニコニコしながらサービスに戻ると、ダンナが心配そうに待っていました。
「おっ、お疲れっ♪」(気楽な嫁)
「お疲れ・・・無事だった?どうしたの?」(かなり心配そうな顔)
「ん?ベストよベスト♪」
「SS4、何かあったの?」
「え!?」
 どうやら、オフィシャルが速報掲示板に分違いで間違えて掲示したらしく、ダントツに遅いタイムになっていたようです。上原さんを知るみんなは、
「あいつ絶対何かやったな」
と思っていたらしく、それで心配されていたようです(笑)
「まあ、俺らならそう思われても仕方ないな(笑)」
「だね(笑)」
「ぎゃはははは!」(自覚のない2人)

Section2
 さて、残り4本です。
 さっきのロングを1本ずつ走って、昨日と同じギャラリーステージを2本走って終わりです。
 2位との差は空いていて、無理をする必要はありませんが、むしろこれからが危ないところです。
「お前、気をつけろよ。上原に無理させるなよ」
「しっかり抑えろよ。もうゆっくり走ったっていいんやけんな」
 またもやいろんな人たちが私のところにアドバイスにきてくれます。(しかもみんな博多弁)
 けれど・・・・私、そういう微妙なコントロールって苦手なんです(涙)。
 SSまでの移動の間に、2人で話して決めました。
・・・・・「好きに走ろう!!」(いつも一緒の結論を出す2人)

SS7(約8.13km)上りロングSS(SS3、5と同じ)
 この林道は3本目になります。ノートにも心配はないけれど、むしろこの緊張感とプレッシャーがきつい。
 こういうのが一番やりにくい。
「リズムを崩さず、今までと同じ走りでね」
「あいよ!」
「よっし・・・・ 3・・・・2・・・1・・・スタート!」
 ロングのSSは、集中力が途切れるととても危険です。上原さんは順調にじゃじゃ馬を押さえつけて走ります。スターレットにも大分慣れたようです。よし、もう後半・・・・そう思った矢先、コーナー手前に人が見えました。
 九州の平山選手のナビです。『スピードを落とせ』というゼスチャーです。と言うことは、停止して医療と消火の助けは必要ない、通過できる、ということ。
「落としてっ!」
 コーナーを抜けると、アウト側に平山選手のCR-Xが止まっています。ドライバーも無事。どうやら車両トラブルのようです。(後に火が出て、車両火災となったそうですが・・・ご愁傷様です(涙))
「抜けたら踏んでっ!最後までいけいけっ!」
 ゴール! 51秒!
 うそ・・・・減速したのに、タイムアップ!?
 よしよし、リズムが崩れてない証拠だ。あと少し!がんばるぞ!

SS8(約6.24km)下りロングSS(SS4、6と同じ)
 いよいよロングの最後です。気を引き締めていかねば・・・!
「リズムと集中力大事にね。 3・・・・2・・・・1・・・スタートっ!」
 上原さんはリズムよくスターレットを走らせます。全体的にスピードも上がったようで、ノートを読むのも楽しい。
 しかし、最後になって欲が出たのか、私の頭の中をぐるぐるといろんな考えが駆け回ります。
『今のはもうひとつ先のコーナーまで読んだ方がよかったな』
『もう少し早い読み上げで続けるべきだったかな』
『あ、さっきのコーナー、前のSSで3つ続けて読もうって決めてたのに、できなかった』
 あれこれ考えていると・・・・「6Rアンド、ストレート先下り・・・」 あっ!!今、下りって言っちゃった!?
「下り!?」
「ごめん上り!」
 このコーナーは2人とも覚えていたし、どう見ても上りだったのですが、一瞬の思考停止が、次のコーナーにお釣りとしてきてしまいました。やばい、こんなスピードが乗った状態でリズムが乱れたら・・・!
 続くコーナーも、不安定な状態でなんとか抜けていきます。早くリズム戻さなきゃ・・・・そう思ったときの3Lが!!
 思いっきり挙動が乱れてしまい、アウト側に流れていきます。やばい、やばい・・・やばい!!
 確実に右後ろのタイヤは道の上にいなかったと思われます。右下は川。もうだめだ、これは復帰できない、なんて謝ればいいんだろう・・・・
 そんな思いが頭をよぎったとき、『謝れっこない!優勝が見えてて、リタイヤなんて、なんて言ったって謝れっこない!!』という自分の声が聞こえ、次の瞬間、
「がんばれっ!戻せっ!踏め、踏め、踏んで戻せええええええっ!踏めえええ!」
 もう、声を裏返しながらの絶叫です(笑)
 絶対にだめだと思ったのに、さすが上原さん。戻した!!
「よっし!いけえええ!踏めええええ!!次っ!4L橋!3.5Rアンド・・・! あと少しっ!最後までいけええ!」
 ・・・・ご、ゴール!!
「ぶひゃああああ!終わったかと思ったああああ!」
「俺も終わったと思った(笑)」
 そしてタイムは、またまたベスト!!そしてタイムアップ!
 あと少し・・・・あと少し!!

SS9(約2.44km)ギャラリーステージ
 さあ、残すところギャラリーステージ2本です。
 しかしここは道が悪いし、距離は短いわりにかなり危険なコーナーが多く、できれば安全に走りたいところです。しかしせっかくギャラリーが入ってくれているし、いいところは見せたいし・・・・・
「さて、あと2本です。」
「おう」
「えー、いつものことですが、皆からは、『上原を抑えろ』との指示がでました」
「おう(笑)」
「えー・・・・ナビからの指示としてましては・・・好きに走ってください(笑)」
「おう(爆)!」
 3・・・2・・・1・・スタート!
 スタートして2つ目のコーナーがギャラリーコーナーです。スターレットはものすごい動きをしながら抜けていきます。こ、こ、怖い(笑)。道のしまった、良好ダートのロングSSを散々走っているため、リズムはかなり上がっていますが、この林道では・・・危険すぎる(笑)
 ゴール間際の左コーナーで、思いっきりアウト側に振れて・・・落ちたあ! 
 ガガガガガガ!!!
 ものすごい音がしましたが、それでもスターレットはコーナーを抜けていきます。お、ラッキー!この側溝、土が掘ってあるだけじゃん♪
 スターレットはもうモノレール状態でコーナーを抜け、そのままゴール!!
 うへええええ・・なんだ今のは・・・全然完走ペースじゃないじゃん(笑)!
「うわはははは!すごかったなあ!」
「まあ・・・・元気があって非常によろしいのでは(笑)」
「わはは!」
 まったく。最後まで怖いよ、この人(笑)

SS10(約2.44km)ギャラリーステージ最後
 さて、いよいよ最後です。こんなところでリタイヤしたらどうしようもありませんが、ギャラリーがいるのでこれまたどうしようもありません(笑)
「今度はさ、あの、きつい2.5Rのとこさ、しっかり抑えて立ち上がり重視でいこうかと思うんだ」
「ああ、そっちのがいいね。・・じゃあ、ノート読むとき、しっかり抑えて立ち上げて! って言うから」
「おう、頼むぜ」
 よっしゃ、最後のステージ、気合入れていくぜ!!
 3・・・2・・・1・・スタート!!
 今度は抑えた大人の走りです(笑)。さすがにさっきので懲りたと見えます(笑)。しかし今回上原さん、学習能力高くなってるな・・・。
 問題のコーナー手前、「ロング4R後、しっかり落として2.5R!・・・あっ!」
 コーナー入り口付近に、前ゼッケンの野島選手が出てきて、必死に停止の合図を送っています。
「落としてっ!止めて止めて!」
 減速してコーナー入り口に入ると、目の前には横転したFXが道を塞いでいます。しかも、まだ車内にはナビである奥さんがいる!!
「まだいる!!中にいるっ!」
 インカムを引き抜いて、メットをつけたまま駆け寄ります。「大丈夫ですかっ!」
 ナビは奥の方にいて、足だけが見えています。ぴくりとも動きません。おかしい・・・意識がないのか!?
 幸い、上原さんの職業は医師であるため(お医者っぽく見えないので忘れられがちですが)、私も比較的冷静でいられました。
 実は、私もラリーという競技に参加するにあたって、応急手当くらいはできないといけないと思い、雑誌に載っていた記事を財布に入れて、ときどき復習しています。頭の中には、応急処置の最初の条件分岐となっていた、
『まずは意識レベルの確認』
ということが浮かんでいたので、走り寄りながら何度も声をかけました。すると、「大丈夫ですぅ~」という声が。
 前回のモントレーの事故のことがあったので、この声を聞けたときは、本当に涙が出るくらいほっとしました。
 ナビを車から出し、後続車を止めて、やっとひと安心。
 話を聞くと、野島選手、ガードレールの上を走って、最後に横転したそうです。・・・・本当に、無事でよかった。

 オフィシャルと後続ゼッケンのみんなでFXをひっくり返しました。FXはエンジンもかかるようだったので、自走して戻ることになりました。白煙を上げながら山道を下ってゆくFXを、みんな心配そうに見守ります。
 いやー、本当に、前ゼッケンの2人が無事でよかった・・・。

 結局、このSSはキャンセルとなり、なんだか唐突な終わり方となりましたが、これで私たちの優勝が確定しました。
 残念ながら、タイムスケジュールが大幅に押していたのと、再車検(右写真)を行うこととなったため、慌ただしい表彰式で、今ひとつ優勝の実感がないのですが、とにかく嬉しかったし、ダートも堪能できて、とても楽しいラリーでした。
 ちなみに私、今回のこのCクラスでの優勝で、全日本2駆部門の、A、B、Cクラス全てでの優勝実績をあげることができました。
 もちろんこれは全て、私を支えてくれた皆さんや、いろんなことを教えてくれた先輩たちのおかげで、私の実力以上の実績です。狙っていたわけでも何でもなく、気づいたら「あ、全クラスだ」という感じだったのですが、それでもやはり、とてもとても嬉しいです。今回のこのラリーでは、自分の勉強不足や、力不足を特に強く感じたラリーで、本当にいろんな人に教えられたりすることばかりで、嬉しいだけでなく、実はかなり落ち込んだり、反省したりする点の多いラリーでもありました。
 応援してくださった皆さん、支えて下さった皆さん、そして色々と教えてくださった皆さんには、深く感謝しています。
 ラリーを始めてもう10年になりますが、いつまでも半人前で情けないです。
 がんばって早く1人前のナビになります・・・。

【おまけ】
 最終SSで野島選手がリタイヤし、私たちが手伝っていた頃。
 SSスタート地点、そしてサービスでは、『上原が最終SSでやらかした』という噂(というより確定情報のように)が流れていたそうです。
 そして、それを聞いたみんなは、残念がったり同情するどころか、
「やっぱりか。アホやな、あいつ!」「ぎゃはははは!」
というような会話が交わされていたそうです。
 あたしたちって、一体、なんなんでしょう・・・・・。

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