ひえつき’02

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全日本ラリー選手権参戦レポート

2002全日本ラリー選手権2輪駆動部門参戦レポート

2002年全日本ラリー選手権(2輪駆動部門)第3戦 ひえつき'02
2002年5月25日(土)~26日(日)
宮崎県東臼杵郡椎葉村周辺約250km(SS:オールダート路面)
タイムスケジュール:第1セクション・・・・25日10時スタート SS3本
          第2セクション・・・・25日14時10分スタート SS4本
          第3セクション・・・・25日19時30分スタート  SS4本
                    → 合計SS11本(約50km)
天候:快晴
路面:ドライ

報告
平家の里、椎葉村。九州山地の真っ直中、人口3900人のこの小さな村は、1986年以来ずっと、全国のラリー選手達の憧れの地でもあります。毎年開催される全日本ラリー『ひえつき』では、スタート後椎葉村の集落の中を走行して行きます。このとき、村民の人たちが沿道で手旗を振って声援してくれるのです!こんな歓迎ムードの中で行われるラリーは全国どこにもありません。今回も椎葉村は我々をとても暖かく迎えてくれました。
さて、ラリーですが、ここは九州のど真ん中!もちろんSSはすべて未舗装路面(ダート)です。2輪駆動部門のラリーは舗装ラリーが多く、今年、オールダートはこのひえつきだけです。いつものアルテッツァはタイヤが標準で17インチ。そんなラリータイヤはありません(ランサーやインプレッサでも15インチです)。仕方なく、今回は埼群戦(埼玉県&群馬県戦)を戦っている加納武彦選手の御厚意にすがって、三菱ミラージュ(CJ4A)をレンタルして出場となりました。ミラージュは5年前まで乗っていたマシンですが、久しぶりのFF。アルテッツァとは挙動が全く違います。かなり不安・・。
今回のラリーは2輪駆動部門と4輪駆動部門の併催です。オールダートということで、舗装用にセッティングを煮詰めている2駆マシンの多くは出場を見送っています。私の出場するB2クラス(2駆で排気量1401~2000cc)には6台が出場しました。しかし、6台といえども、現在ポイント2位の曽根選手(第1戦3位、第2戦2位)、ポイント7位の松原選手(第1戦5位、第2戦R)、九州の期待の若手:大津選手(昨年全日本戦最終戦のウィナー)など有力選手ばかり・・しかもみんなダート路面を得意とする選手ばかりが集まっています。またまた厳しい戦いだあ~!!

第1セクション
スタート後、いつもと違って今回は椎葉村役場前でレセプションスタートがありました。WRC(World Rally Championship)で良く出てくるようなスタートゲートがあり、周りに村の人たちが大勢集まっています。各選手達も戦い前の緊張を忘れ、照れながら観客に手を振って1台1台スタートして行きます。やっぱり『ひえつき』は良いわあ~!

SS1(ダート上り 約5.6km)
なんと、今回はSS1からSS3まで3回同じ区間を連続して走ります。比較的道幅は広く、中~高速コースです・・が!今回はゼッケン8だったので、SS1は浮き砂利が目立ち、2輪駆動車にはちと辛い路面です。スタート。あれ?なかなか加速しません。舗装路のアルテッツァの加速に慣れてしまっては、ダート路面のミラージュの加速ってこんなもんなのでしょうか??なんかストレスが溜まるような加速・・。それでも7000回転からは結構良い調子で加速します。しかし、2速にアップすると5000回転まで下がる・・・加速しない。こりゃ遅いわ!長い上り直線の先にギャラリーが鈴なりに観戦しています。そこまでの直線も、2速ではトルクバンドまで回転が上がりません。う~ん、そうかぁ!排気量が小さいから中速域のトルクが無いんだ!ようやくわかりました。こんな場合は、半クラ多用!回転をできるだけ落とさないようにドライビングするのがミソです。ブォ~ン!おお、加速する!これなら勝負になるぜい!ありゃ?ゴール!ちょっと気づくのが遅かったかな??SS1はベストタイムに2秒負けの3番でした。まあ、あれで2秒差なら次は大丈夫かな??しかもここでは優勝候補筆頭の曽根選手が途中のミスでベストから9秒遅れました。チャ~ンス!

SS2(ダート上り 約5.6km)
今度はスタートから半クラ多用。さっきに比べると良い加速をします。それでも勾配のきついところはやっぱり加速が鈍い。吸排気をしっかりチューニングしてあればこういう所が変わるんだろうなあ・・。今度はギャラリー前の長いストレートも半クラ加速で2速で8500回転まできれいに回りました。4駆のハイパワー車が1回走っただけで表面の浮き砂利はきれいに飛んでいます。硬い路面が出ていますがラインをはずすと砂利がいっぱい。さっきよりは良いタイムは間違いありませんが、砂利に乗ると姿勢は乱れるしタイムも落とします。あ!ゼッケン6番のミラージュが早くもコースアウトリタイヤしています。明日はわが身・・フロントタイヤの通るラインに細心の注意を払いながら走りました。
SS2はみんなタイムを上げてきました。ベストには1秒差ですが4番タイム。ドングリの背比べ状態。なかなか差はつきません。

SS3(ダート上り 約5.6km)
だんだんミラージュの運転に慣れてきました。4駆が2回も掃除した路面は砂利がきれいに飛んでますが、きついコーナーでは轍(わだち)ができています。轍には前輪を完全に入れてアクセル全開で走行するのが原則。まるでレールを走るように曲がります。SS2の時に、インの山側にある側溝の多くが3/4 程、土で埋まっているのを確認していました。あの側溝は轍代わりに使える!そう考えていました。コーナー進入からイン側を側溝に落とします。約10cmほど落ちますが、イン側が引っかかるのでかなりハイスピードでコーナリングできます。そのまま加速しつつ脱出。数カ所で明らかに速いコーナリングができました。ギャラリーコーナーをクリアして少し行った時、突然!ステアリングが重くなりました。『バースト?』 さんざん側溝に引っかけたためバーストしたか?でも、ゴールはもう1kmくらいです。がんばれ!自分で自分を激励しながら走り続けます・・・が、右コーナーも、左コーナーもステアリングはめちゃ重いけど、ちゃんとコーナリングできます。バーストとは違う気がする・・・。原因が分からないままゴール!最後の1kmは遅かった。何秒負けたかと思いながらタイム比較。おお!ベストタイムです。もしかしたらもっと良いタイムが出たかも知れないと思うとちょっと悔しいけど・・・まだラリーは始まったばかり!それよりもステアリングの重い原因を調べるのが先です。前輪・・・やっぱりバーストしていません。ボンネットを開けると、パワステオイルが吹き上げています。思い出しました!ミラージュはパワステオイルが吹き出るんだった!きっとオイルが無くなってパワステが利かなくなったのでしょう。幸い、ここで第1セクション終了。サービスに戻ります。サービスでオイルを足せばパワステ復活!・・・と思ってました。この時点では・・・・・。
第1セクション結果。
古川(3秒)上原(2秒)大津(7秒)松原(1秒)曽根

第2セクション
結局パワステは直りませんでした。というのも、オイルだけの問題ではなく、パワステポンプ自体が焼き付いていたのです!以前からオイルの量が不足していたのでしょう。皆さんもミラージュで攻める人はオイルの量に注意!です。
さて、リタイヤも考えましたが、第1セクションでリタイヤしたゼッケン6のミラージュがサービス地点に戻って来たらパワステポンプをはずして第3セクションは借りる・・という案を立て、サービス隊に頼んで、ナビとも『とりあえず第2セクションは何とかパワステなしで走ってみよう!』という無謀な意見が一致し、スタートしました。

SS4(ダート上り 約4.1km)
まったく、SS地点に着くまでの10kmの舗装の山道のきついこと!パワステが無いとステアリングは半回転以上切れないですよ!こりゃ、大幅にタイムダウンだなあ・・・と思っていたら、だんだんムカッとしてきて、『ふん!俺が普段から筋トレしているのが伊達じゃないことを見せてやるぜ!』と気合いが入ってしまいました。スタートからしばらく上りが続きます。やっぱり、お、重い!こんな状態ではカウンターステアは間に合いません。できるだけオーバーアクションしないようなドライビングを心がけます。皮肉にもこのドライビングがFFの運転にベストマッチしたようです。第1セクショントップの古川選手に2秒勝ち! 次ゼッケンの大津選手と同秒。ここでトップまで2秒差まで詰めました。しか~し!!なんと最終ゼッケン曽根選手がここで来ました!なんと一気に4秒も上回って来ました。これで順位は、
古川(2秒)上原(2秒)大津(4秒)曽根(5秒)松原

SS5(ダート下り 約2.9km)
私、ラリーを始めて今まで、ダートの下りを得意としています。でも重ステではオーバースピードで進入するわけには行きません。あ~!運転にこんなに神経使うのは初めてだ!自分でもタイトコーナーは慎重すぎるかな?と思うくらいの走りでした。ここでも曽根選手がベストタイムで追い上げて来ました!それでも私は1秒差の2番タイム。3番タイム大津選手を3秒離して、ついに古川選手を逆転!トップに立ちました!
上原(5秒)大津・曽根・古川(10秒)松原

SS6(ダート上り 約4.1km:SS4と同じ)
先ほど曽根選手に4秒離されたSSです。こうなりゃ、ハンドルが重いとかなんとか言ってられない!行け~!!!ナビの読むペースノートを100%信じて、コーナー進入から脱出姿勢を作ってアクセル全開!それでも加速しなけりゃ半クラ!そのうち、気づけば右足はアクセル全開、床まで踏んだまま、進入の減速は左足でクラッチを切ります。そのまま半クラで加速しつつ脱出!なんと、ゴールしてみれば、SS4より11秒速いタイム!おっしゃ~!と思ったのもつかの間。今度は大津選手がベストタイム!1秒負けました。
上原(4秒)大津(2秒)古川(2秒)曽根(10秒)松原

SS7(ダート下り 約2.9km:SS5と同じ)
今度はかなり気合いが入っています。さっき1速まで落として進入したコーナーは2速のまま、2速で踏み切っていた直線を3速で加速。これこれ!この走りが本物だ!自分でもかなり納得の走りでした。2番タイム曽根・大津選手を2秒離してベストタイム!ここで差を縮めさせなかったのは大きかった!
第2セクション終了です。重ステでトップに立てたのは非常にラッキーでした!これでサービスに戻ってパワステが復活すれば、第3セクションは逃げ切れる!そう思ってました・・・この時点では!
上原(6秒)大津(4秒)曽根(4秒)古川(5秒)松原

第3セクション
結局、パワステは直りませんでした。というのも、ゼッケン6番はリタイヤ後、サービス地点には帰って来ず、そのまま自宅に直帰してしまったらしいです。オフィシャルや他チームのサービス隊にも聞いてみましたが、ミラージュに乗ってきた人は見つかりませんでした。第2セクション、重ステで走っただけで、すでに両腕・両肩は筋肉疲労が著明です。ここでのリタイヤも考えました。でも、あきらめの悪いドラ&ナビはチャレンジを選択しました。重ステで第3セクションも行く! マークすべきは、地元が近く、ダートが得意の大津選手、そして第3セクションのフラットダートに一番速そうなAE111レビンを駆る曽根選手です。大津選手も曽根選手も『今日は第3セクション勝負!』と最初からこの第3セクションに勝負どころを持ってきていました。みんなかなり気合いが入っています。

SS8(ダートやや上りだがきついコーナーが少ない区間 約1.8km)
さあ、勝負!スタートしてしばらく、ややきついコーナーが連続します。その後、高速コーナーのオンパレード!多少のブラインドコーナーもナビの声だけを信じて、ミラージュは2速全開でかっ飛びます。『ここが勝負や!』臆病になりそうな・・アクセルを抜きそうな自分を抑えながら、ゴール手前は3速全開!ダートの林道を130km/hです!
やりました!ベストタイムです!松原選手が2番タイム、曽根・大津と続きます。さすがに距離が短く、それぞれ1秒差。これで、
上原(9秒)大津(3秒)曽根(6秒)古川(2秒)松原

SS9(ダートアップダウンほとんどなし 約4.6km)
このラリー最大の勝負所です。差を考えると、ここで2桁秒差にしておけば、ほぼ勝利は間違いないでしょう。逆にタイムを縮められるともう1度ここを走る最終SSが勝負になります。前半、タイトコーナーは1速まで落として加速しつつクリア。直角より緩やかなコーナーは2速のまま斜めにドリフトして抜けていきます。あれ?この車、FFだよな?まるで雨の中のアルテッツァみたいな感じ・・・俺って何に乗ってもこんなドライビングなのかな???コース中盤、ストレートが長く、緩やかなコーナーが続く・・その先、突然、道の両側が転落する危険性のあるタイトコーナーが来るところがありました。そこの、タイトコーナー・・・この日初めて飯田ナビのペースノートが遅れました!と言うより、その前まで3速全開!スピードが高いため思った以上に早くコーナーが近づいていたのでしょう。フルブレーキ!ミラージュは4輪ロックしたまま、真っ直ぐアウト側の崖に向かっていきます。ウギャ~!! おや?このシーンはどこかで見たことがある!あれは・・・?そうだ!この前の栃木茨城県戦でアルテッツァで落ちた時と同じだ!ブレーキを離してアクセルを踏まなきゃ!! 渾身の力で重ステを目一杯右に切り、1速にシフトダウン。アクセルオン!次の瞬間、路肩まであと20cmを残して、ミラージュは脱出方向に向けて加速し始めました。ここでびびってペースダウンしては勝てません。ここは一番の勝負所です。再び2速全開でミラージュは斜めに滑って行きます。もう両肩から両腕、両手首まで筋肉には力が残ってないような感じ・・・。もうだめかも・・そう思った瞬間、ゴール!後ろから来る選手のタイムと比較します。よし!大津・曽根両選手に3秒勝ち!このラリーの勝利がはっきり見えてきました。
上原(12秒)大津(3秒)曽根(2秒)松原(8秒)古川

SS10(ダートやや上りだがきついコーナーが少ない区間 約1.8km:SS8と同じ)
ここで我々は失敗を犯しました。大津・曽根選手に気を取られて、SS9ベストタイムの松原選手を見逃していたのです!残り2つのSSで12秒・・・SS8&9のタイムを比較すれば大津選手には追いつかれない秒差です。曽根選手も多分もう大丈夫でしょう。そこで、我々は安全策を採りました。もう全開ではなく、8分の攻め方で良い・・と。勝ちに入ったのです。この1.8kmのSSを前回より3秒遅いタイムでゴール。ベストの5秒落ち。
上原(9秒)大津(1秒)曽根(2秒)松原(12秒)古川

SS11(ダートアップダウンほとんどなし 約4.6km:SS9と同じ)
ここも負けすぎず、無理をしない走りを心がけました。すべてのコーナーを2速で安全に。直線・ハイスピードコーナーはそこそこに、SS9で落ちかけたリスキーなコーナーはべた落としで走行。タイムはSS9の5秒落ち。次ゼッケンの大津選手が来ました。結構速い!私より6秒早くゴールしました。それでもなんとか予定通り、大津選手には勝てたようです。曽根選手にもタイムを聞くと、大津選手と同秒。これで、上原(3秒)大津(1秒)曽根で決まったはずでした。ところが!最終SS、ベストタイムは、松原選手が大津・曽根選手より6秒も速く走っていたのです!!(なんと私より12秒も速い!)結果は・・
上原(3秒)松原(同秒)大津(2秒)曽根(28秒)古川
やはり後から考えると、2SSを残して勝ちにはいるのはちょっと早すぎたように思います。松原選手の追い上げで良かった。あのタイムを大津選手や曽根選手に出されていたら・・・最終SSで大逆転負けでした。反省、反省!

最終成績:2輪駆動部門1401~2000ccクラス 優勝(6台エントリー)

ま、なにはともあれ、レンタル車で優勝できたので、結果オーライということで、素直に喜びたいと思います。しかし、今回は『マシンの整備』ということについて深く考えさせられました。やはり普段からしっかりメンテしてやっとけば、攻める時にもマシンは100%、いや120%の力を提供してくれるのです。今回はパワステオイルの不足が原因でポンプが壊れてしまいました。エンジンオイルも同じです。今回、ラリー前にエンジンオイルをNAPRO PROMPに変えておきました。他社のオイルだったら、もしかしたらあの上りのSSの加速はもっと鈍かったかも・・・。エンジンを最大限にぶん回したときに、初めてオイルの違いがわかるんです。今回のミラージュは8500回転をいくら続けても、オイルの熱ダレによるパワーロスは感じませんでした。
さて、6月は仕事のせいで22日のRTNラリー(岐阜)には出られない予定でした。ところが今回の全日本戦優勝を耳にした上司が、『全日本と名の付く所で優勝できる奴を参戦させない手はない!』と叫びました。おかげで22日は岐阜で第5戦に行けます!さあ、次はアルテッツァで優勝だ!あいたたたた・・・腕が全然上がらない!!

追記:今回マシンを貸していただいた、加納武彦選手。ステッカーを貼ってないマシンで優勝してしまって申し訳ありません、ナプロフクシマさん。そして、誰よりも私のドライビングを信じて横に乗りながら、いつも的確な指示を与えてくれている、ナビの飯田有希子選手。さらに、毎回メンテ&サービスに励んでくれる、森園くん&オンタイムの方々。今回の優勝はみなさんのご協力のおかげです。心からありがとう。

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