ひえつき’02

お問い合わせ

全日本ラリー選手権参戦レポート

2002全日本ラリー選手権2輪駆動部門参戦レポート

ナビゲーター参戦レポート 第3戦 ひえつき’02

皆さんはじめまして。今回から参戦レポートを書きます、上原選手のナビの飯田です。
この参戦レポートで、「生きている喜び」を皆さんに少しでも伝えられたら(?)と思っています(笑)

ナビゲーターの仕事は具体的に言うと色々ありますが、一言で言うと、「ドライバーを速く走らせる」ことです。ペースノートを読み、ペース配分を考え、走りやセッティングで気づいたことを提案してみたり、ドライバーの精神面もコントロールしたり、ときには他のクルーに精神的揺さぶりをかけたりするなどして、地道に勝利に貢献する仕事です。
一見地味ですが、ドライバーの本気の走りを見ることができるのはナビ1人しかいません。
地味なようで、実は結構大変な仕事なんです。このレポートで少しでもそれが伝わったら、そして皆さんにラリーの楽しさをわかってもらえたら、と思います。

全日本2駆部門第3戦、併催では1戦目。
今年のカレンダーでは、2駆単独開催は5戦で、併催4戦ですが、年間シリーズの有効ポイントは、2駆単独開催の5戦+併催のうちのベストポイント1戦、ということになっており、年間シリーズを争う選手にとっては、「併催で高いポイントを取る」ことは非常に大切です。
そこで、「どの併催に出るか」ということが問題になりますが、ここひえつきのラリーはオールダートなので、舗装ラリーがほとんどである2駆の選手には、ちょっと(かなり)つらいラリーです。
しかし、だからこそ、大きなポイントを狙える!ということでもあり、あえてこのラリーを選択するということは、それだけ自信がある、ということでもあり、そして、オールダートで車が傷む可能性が高いのにエントリーするということは、「入賞ではなく、優勝ポイントを獲る!」という気合の選手が集まるということでもあります。
そして私たちも、その1クルーでした。
「俺はダートの下りが一番得意だ!」という上原選手の言葉を信じ(しかしその言葉の後には、「ベストか落ちるかだ!」という言葉も続くのですが)、今回も優勝目指してエントリーです!
ちなみに、ひえつきにエントリーする時点での私たちのポイントは20点。
まだまだ年間シリーズ入賞には距離があります。ここで100点取れれば…!

SS1
今回は借り物CJですが、一体どれだけ走ってくれるのか全く分かりません。
作りこむ時間も、練習する時間もなく、私も乗るのは今日が初めてです。
前回はフライングを取られて順位を落としてしまったので、今回はフライングしないように強く注意して・・・スタート!
いつもの感覚でペースノートを読みますが、遅い!スタートしてすぐはストレートなのに、全然前に進まない!横に乗っててもどかしいくらい。
「踏めーー!」久しぶりに絶叫です。
こんな状態で勝負になるのか?いきなり不安になりました。

SS2
半クラを多用して加速につなげ、なんとかタイムアップ!
上原さんのことだからもっとタイムアップできると思う。CJに慣れてない今でも、他の選手とはどんぐりの背比べ状態だから、つかみさえすればいけるかも?
しかし、借り物の競技車でも容赦なく半クラを多用する上原さん。さすがです。
「(クラッチを)蹴れー!」と叫ぶ私も私ですが。

SS3
1ステは同じ林道を3回走ります。これが最後の1本。タイムアップも大幅に見込めるけれど、他の選手も大きくタイムアップしてくるはず。決してロストしないように、少しでも上原さんのタイムアップに繋がるようにと必死でペースノートを読み上げます。
・・・と、SS中に上原さんが突然なにかわめきだした!しかし、雑音のひどいインカムだったために、私の受けるスピーカーの音量は予めかなりしぼってあり、上原さんの声が全く聞こえない!「・・・ターが!・・・が!」なんだ!?いよいよおかしくなったのか?
しかし、合間に「・・・怒鳴ってっ!」という言葉が聞こえた。わかった!理由は分からないけれど、インカムが聞こえなくなったんだ!
しかし、私のメットはフルフェイス。左手でメットを押し下げ、口を外に出すようにして大声で読み上げる。舗装ならまだ良かったけれど、ダートではどんなに怒鳴っても聞こえるかどうかは分からない。のどが裂けそうなほど怒鳴りつづける!
なんとかゴール!
ゴールしてふと見ると、インカムどころかラリコンも死んでいる。ボンネットを開けたらバッテリーがぐらぐらして、電気系の端子が抜けていた!
・・・・・・。(2人とも絶句)
そして、パワステが死んだことも発覚。サービスで生き返るかどうか?

サービスで見てもらったら、パワステポンプが焼きついていた。これじゃあ復活できない。
パーツをもらえそうなCJを探して走り回るが、見つからない。
「もう時間がないよ!とにかく走れるようにして!!」
「ベルト外していいっすか?」
「いい!(独断)パワステポンプがないなら仕方ない!走れるようにして!・ ・・上原さん、とにかく3ステまでがんばろう!ね?(はぁと)」
ということで、2ステはパワステなしのスタートとなりました。

SS4
ここに来るまでの繋ぎ区間ですら上原さんは苦しそうです。
一体これで走れるのか?と内心不安でしたが、なんと!これがまた速い!
ハンドルをこじってのリカバリーができない分、進入からの姿勢を作って立ち上げを重視するため、無駄のないドライビングになっているようです。
どんぐりから抜け出し始めました!

SS5
ついに上原さん得意の下りのダートです。
ここでトップに踊り出た!腕はきつそうだけれど、速さは増しています。
一体この人、なんなんだろう?人間じゃねえ!と改めて思いました。

SS6
さすがに上原さんも腕が重そうです。口数も減ってきました。
しかし、このSSはSS4と同じコースなのですが、なんと11秒もタイムアップ!
信じられません、この人…
それにしてもまだSSは5本あります。一体どこまで保つのだろう?
ゴール後、他の選手たちから「上原さん速いねー!」と声をかけられますが、内心は
「そのうちバテるだろう」と思ってるように見えます。
私もそう思っていました。タイムをどれだけ上げても、他のクルーには余裕が見えるような気がします。やっぱり、重ステで走りきるのは無理なのか?
ちょっと気弱になったとき、曽根選手がミスしてタイムロスしたと聞きました。
このときほど私の足取りが軽かったことはないでしょう。満面の笑みを隠し(バレバレだったと思いますが)、上原さんの待つCJに駆け戻り、「上原さん!神様は見捨ててないよ!曽根さんミスったって!!」と叫んでしましました。
曽根選手ごめんなさい…

SS7
2ステ最後のSSです。
「これを走れば、3ステはパワステになるからね!森園くんが直してくれるから、がんばろう!」
そう声をかけスタートしましたが、速い速い!最後の気力を振り絞るように走ります。
ゴール!なんと2ステ終了時点でトップです!うそみたい!!
「いやー、きつかったーー!」
「お疲れさまー!早く帰って直してもらおうね」
そんな会話をしながらサービスに戻ります。
しかし実は私、「多分パワステは直らない」という予感がしておりました…

サービスに戻ってみると、どの車もパワステポンプが合わないということで、あちこち駆けずり回って探しましたが、結局見つからず。
「上原さん!あと4本じゃん、ここまで来れたんだからゴールまで行こう!ね!」
「うそーー!俺もう腕あがらんよー!」
とかなんとか言いつつ、実は全くあきらめていない2人。
「重ステでここまで来たんだ、優勝しなくてどうする!!」

3ステは既に暗くなっており、このラリーで一番の勝負どころとなるだろう、と予想されたステージです。
マークすべきは大津選手と曽根選手。
上原さんの腕と共に、どこまで保つか心配なのがタイヤでした。
最初の2本のうち、4.6kmのSSでどれだけタイム差をつけられるかがネックです。

ちなみに余談ですが、実は私、このラリーで今まで一度もロストしていません。
上原さんからも「お前今日、ロストせんね!」と言われて初めて気づきました。
まあ、ロストしづらいコースではあったのですが、私にしては確かにすごいかも!?
しかし、これがプレッシャーを増し、おまけに上原さんからの「俺は今日、お前のペースノートを全面的に信じて進入してる」という一言で、更に更にプレッシャーが!!

SS8
まずは距離の短いSS。
短いからこそ、ここでタイム差をつけられると後が苦しいです。
腕の辛さを感じさせないドライビングでまたもやベスト!距離が短いので大きな差にはなりませんが、この積み重ねが大切です。
あと3本、早く終わりたい!もう胃が痛い!

SS9
勝負の4.6kmのSSです。おそらくこのSSが勝負を分けるでしょう。
上原さんの腕にも大きな負担がかかるでしょうが、ここを押さえないと優勝はありません。
そんな大切なSSなのに…私、やってしまいました。
ロストではありませんが、きつい右コーナーの読み上げが一瞬遅れました。上原さんの走りが速くなっていて、予想より早くコーナーがきてしまったのです。
「ストレートエンド、2.5R!」顔を上げるともうそこにコーナーが!
「ごめんっ!」コーナーの両側は何もない空間です。『落ちたら終わる!』心の中でそう叫びました。どうしよう、こんな大事なところで遅れるなんて!
ほんの一瞬のことですが、あのコーナーがゆっくり近づいてくるのは今でもはっきりと目に浮かびます。『ここまでがんばったのに…ここでリタイヤなんて嫌!』
そのとき、上原さんがアクセルを踏みこんだ!ハンドルを切る!CJが右を向いた!
「踏んで踏んでっ!!」とにかく叫ぶ!まだ道の上だ!落ちてない!
そこからは必死で読み上げました。…ゴール!
良かった…落ちなくて。
タイムは大津選手、曽根選手どちらにも勝っています。勝てる!勝てる!
それにしてもさっきので改めて分かりました。上原さんは、私のペースノートを全く、全面的に、信用しています。おそろしい…私って実はすごい重要?(今更のように気づく)

SS10
あと2本です。余程のことがあれば別ですが、これだけのタイム差があれば、大津選手と曽根選手にひっくり返されることはなさそうですが、上原さんの腕も限界が近くなっていて、踏みこみのペースと腕の動きにずれが出てきているようです。
このままだと、「何か」が起こってしまうかもしれません。
悩んだけれど、完走ペースで走るよう指示しました。
「基本的にこれまでと同じでいいから。気合を入れすぎず、抜かず、今までと同じでね。
もし腕がやばいようなら、完走ペースでも大丈夫だから」
そう声をかけてスタート!
上原さんのタイムが全体的に上がっていることを考慮して、読み上げのタイミングを早めにとります。タイムはさっきより落ちましたが、大津選手と曽根選手との差はまだあります。なんとかあと1本、走りきろう!

SS11
さっきノートの読み上げが遅れたSSです。
あのコーナーで落ちたら終わり!気合を入れ直して最後まで走りきるぞ!
危ないコーナーでは慎重に、ストレートではちゃんと踏んで…ゴール!!
長かった…とても長い距離に感じました。
とにかく良かった、最後までいけた!!上原さんももう限界のようです。
ゴール後、大津選手と曽根選手のタイムを聞いて、優勝を確信しました。

〔おまけ〕
しかし!暫定結果を見ると、なんと2位は松原選手で、うちの3秒落ちです。
3ステに入るときまでは、大津選手と曽根選手よりもタイム差があり、全くマークしていませんでした。松原選手曰く、「涼しくなったからがんばった」とのことですが、さすが、私たちよりもずっとずっとキャリアのある選手です。ものすごい追い上げでした。
これでフライングなんてとられてたら、大逆転されているところです。
やはりベテラン選手の底力は侮れません。これだからラリーは怖い!
私のようなまだ経験の浅いナビがペース調整しようなんて甘かったようです。
深く反省しました。

余談ですが、実は私、今年でラリーを始めてちょうど10年目になります。
記念すべき10年目という年に、その頃からずっとずっと憧れていたひえつきのラリーに出るということは、私にとってもとても特別なことでした。
そして、その憧れのひえつきに初出場して優勝できるなんて、夢にも思ってないことでした。優勝する気でエントリーしたけれど、実際に優勝してみると、なんだか現実感がなくて、うそのようです。
でも、こんなに楽しいラリーができたのは、支えてくださる皆さん、サービス&メカニックの森園くんとオンタイムの方々。応援してくれる友人たち、そして毎回「奇跡」を予感させるドライバー上原さんのおかげだと思います。
本当にありがとうございました。
さあ、これでシリーズ3位!年間シリーズチャンピオン目指して次もがんばるぞ!

そしてゴール会場にて。私のゴールをおそらく誰よりも心配しつつ楽しみにしつつ、そして恐れている主人(主人も同じBクラスドライバーでライバルなのです)に電話しました。
「有希子です。ゴールしました。生きてます!」

 
スペシャルコンテンツ
主催講演会
福島ホープス
福島ファイヤーボンズ
本゜骨“ポンコツ”応援団
ナプロアース杯東北リトルリーグ野球大会
ボクシング
映画「アライブフーン」
試乗記
コラム
福島ユナイテッドFC
スーパー耐久
全日本ラリー選手権参戦レポート
SODIワールドカップ&DUNLOP NEXTCUP