トヨタ「カローラ」を試乗しました。

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試乗記

【試乗記】トヨタ「カローラ」

「となりの車が小さく見えます」でスタートしたカローラも1966年の登場以来もうすぐ50年。日産サニーと競合することで誕生した国民車は、長らく不動の販売台数トップを守ってきた。しかし2002年にホンダ・フィットに首位の座を追われ、一時期巻き返したものの、昨今はハイブリッド車の隆盛で、再び首位の座を追われる形となっていた。

11代目に当たる現行のカローラ・シリーズは、4ドアセダンの「Axio(アクシオ)」とステーションワゴンの「FIELDER(フィールダー)」の2車種。登場当初は価格優先の戦略でハイブリッド車の設定はないという発表だったが、思いのほか早くハイブリッド・モデルが登場した。

外観はほとんど差がないが、中身は「アクア」と同じ1.5リッターエンジンに2モーターのハイブリッドシステムを組み合わせたものである。

さっそく「Axio」、「FIELDER」の両方に試乗してみた。

■トータル・パッケージについて

累計販売台数4000万台を超えるカローラの11代目は、4ドアセダンが「Axio」と名付けられている。アクシオとは、トヨタによれば『ギリシア語で「価値あるもの」「品質」を意味する”AXIA”からの造語』 とのこと。一方の「FIELDER」はその名のとおりレジャー用の車という意味合いなのだろう。「COROLLA HYBRID JEANS」というサブ・タイトルも付けられている。

両モデルとも、日本の道路事情では実に使いやすい5ナンバー枠に収まるボディで、昨今の何でもかんでも3ナンバーにしてしまう傾向とは一線を画す行き方だ。言い換えればコンサバとも言えるが、筆者は5ナンバー・2リッターが日本での使い勝手では最良という主義なので、大いに納得のいく姿勢である。つまり1.5リッターエンジンにハイブリッドシステムが付加されたことで、ちょうど2リッタークラスほどの性能となっている点が好ましい。

さらに、どちらかといえばダウンサイジングされたボディにも関わらず、室内・荷室は広く取られており、ハイブリッド・モデルといえども、ノーマルエンジン搭載車に比べてなったく遜色のない居住性と使い勝手を実現している。

■試乗

今回の試乗は同じ週の前半と後半に分けて、先に「Axio」を、後半に「FIELDER」をお借りすることとなった。ほぼ同じルートをそれぞれのモデルで走ってみることで、定点観測のような効果を狙ってみたのだ。

まず「Axio」だが、初対面の印象は実に好ましいものだった。コンパクトな外観は良い意味でのコンサバなもので、これまでプリウスのセダン版として存在していた「SAI」が少々アグレッシブな方向に振れてしまったいま、端正なセダンとしての存在感は大きい。

乗り心地も、今どきの車らしい少々固めの味付けだが、現代的な4ドアセダンとし捉えれば、無闇に硬いというほどではない。低速域では多少ゴツゴツするものの、高速走行になれば無駄な上下の揺れ残りや、ロールは抑えられていて、かなりしつけの良い走りを見せてくれた。

カローラ Axio トランクスルー「Axio」の美点は、その使い勝手にある。大きめのトランクには旅行用のスーツケース2個が簡単に収まるし、後席の足元は外観からは想像できないくらいに広い。少なくとも、大人4人が移動するには必要にして充分なスペースが確保されている。さらに、バッテリーをシート下に収めたお陰で、トランクスルーまで可能になっているのだ。

端正な外観と必要にして充分な車内スペース、小回りの利く5ナンバーのボディ。カローラ「Axio」は、今どき珍しい外連味のない普通のハイブリッド・セダンだった。

さて、週の後半は「FIELDER」に試乗してみる。車体の前半分はほとんど同じものだが、後席のドアから後ろはまったく違う外観となっており、完全なステーションワゴン型のボディとなっている。よくありがちな、商用車からの転用的なステーションワゴンではなく、あくまでも専用のデザインである点は好感が持てる。

乗り心地は、意外というか、「Axio」よりもしなやかな印象だ。最近はどんなファミリーカーでもレーシングカーのような硬めの足回りを装着する例が増えているが、果たしてそんな足回りに頼らなければならない走行をする機会は頻繁にあるのだろうか。悪しきモータージャーナリズムの影響で、全員右へ倣えでゴツゴカローラ FIELDER 荷室ツした乗り心地になっていくのはいかがなものかと思う。その車の性格に合った、しなやかでしっとりとした乗り心地があっても良いのではないかと思う今日このごろである。

室内だが、ボディサイズを考えれば恐ろしく広い。後席までは「Axio」と変わらないが、そこから後ろの荷室は確かに広い。商用車からの転用的なステーションワゴンではないと言いながら、ある意味で商用にも通用する広さである。

■燃費

EVモード、つまりモーターのみでの走行で時速50km近くまで走れることから、都内での渋滞走行から高速道路まで、安定して優れた燃費性能を発揮してくれた。都内プラス成田空港までの往復に要したガソリンの量は「Axio」が13リットル程度、「FIELDER」が15リットル程度。走行条件や距離は多少違うにしろ、ガソリンタンク満タン借り・満タン返しが原則の広報車で、給油先のスタンドで申し訳ない気持ちになる給油量である。

実燃費は「Axio」がガソリン1リッターあたり21km程度、「FIELDER」がガソリン1リッターあたり20km程度だった。ごく普通に走ってこの燃費なので、両車とも燃費走行を心がけるなら簡単にガソリン1リッターあたり25km程度は実現できると思う。

■よきファミリーカーとしての配慮

両車ともに共通だが、実際に試乗してみてまず感じたのが視界の良さだった。運転席からの眺めは自然で、昨今のミニバンにありがちな視界を遮る太い柱の三角窓もないし、前後左右すべての視界が良好なのは、とても安心できる。また、ドアの開閉時に気がついたのだが、前席アームレストのドアハンドルの形状がとても良く出来ていて、実に開閉がしやすいのだ。そして豊富な物入れ、さらには前席シートの用意まであるのだ。至れり尽くせりの社内装備は、痒いところに手が届く…ファミリーカーに望ましい要素であり、11代目のカローラはこのポイントをしっかりと抑えている。

■まとめ

ハイブリッド全盛の日本のモータリゼーション。多くのモデルがハイブリッドシステムを搭載して燃費競争に凌ぎを削っている。そんな中で試乗してみたトヨタ・カローラの「Axio」と「FIELDER」。ベースがガソリン車であり、国民車的な性格の強い車だけに、およそ40万円の価格差で登場したハイブリッド・モデルの動向は気になるところだが、メーカーの予想に反して好調な売れ行きとのことである。勢い込んでハイブリッドを主張するのではなく、さりげなく、普通の存在感でハイブリッドであるこのカローラ2モデル。筆者はかなりの好感度を抱いた。

ライタープロフィール
林 溪清(はやし けいしん)

ジャーナリスト・ラジオパーソナリティ。
コピーライターを経て執筆活動に入る。渓流釣りや自動車、旅行記を中心に執筆を続け、環境問題や省エネルギーについての著述も多い。
2009年からは江東区のコミュニティFM局である「レインボータウンFMの「大江戸ワイドSuper Saturday」のメインパーソナリティとして出演。こよなく江戸の「いき」を愛する、自称後発性江戸っ子として下町文化を発信し続けている。
2011年8月よりNPO法人「江戸まち通信」の代表として活動を開始。 江東区亀戸に「江戸まち茶屋」を開き、地域振興、地元商店街振興に取り組んでいる。
著書に『F1の秘密』(PHP文庫/PHP軽装版)、『究極のスピード インディカー』。

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