新たに入ってくる仲間にあらためて伝えたいことは、単純に言ってしまえばチャレンジを恐れないということでしょうか。
私がこの業界に入ったときに強く感じていたことがあります。それは以前の自動車リサイクル業界の殿様商売的な態度を何とか改善したいという想いでした。
以前はとてもお客様を相手にする態度ではない会社が多かった。特に自動車リサイクル法が施行される前はひどい状態のところがあった。廃車代金をお客からもらっているのに、廃車せずに転売するような不正行為が行われていました。そういう業界を何とか改善したいと思っていました。
昔の自動車リサイクル業者は目立つ場所に会社を作りませんでした。中古パーツを売る会社は、目立たないところに隠れるように立地していたところがほとんどでした。私はそこから変えたかったので、国道に沿った目立つ場所に、きれいなショップを作って、たくさんのお客様に買いに来て欲しかったのです。
自分がそうしたいからそうしたまでなのですが、それが業界からは反感を買ったこともあります。業界の商慣習を破っているように映ったんでしょうね。私としては、単に自分がしたい通りにやったまでなのですが、結果的には大きなチャレンジになったようです。
また、インターネットがまだ目新しかった頃、いち早くネット通販にもチャレンジしました。当初はクレームも多く対応に苦慮しましたが、次第にノウハウもたまって少しずつ軌道に乗りました。現在ではそれが発展して、廃車ドットコムという合同会社を立ち上げ、全国展開しているところです。これは「個人向け廃車引取業務」を行っている会社の集合体です。個人のお客様から直接クルマを仕入れて法律に則って適正にリサイクルすることを目指しています。こういう組織を作ったのも、日本では私が初めてだと思います。
それからもうひとつ、廃車から電気自動車を作るプロジェクトにもチャレンジしていて、実際にバッテリーで電気モーターを動かして公道を走れる二人乗りの電気自動車「コンバートEV」を完成させました。これは軽自動車の廃車を利用して作った電気自動車です。家庭で充電できるし、一回の充電で60㎞ぐらい走るので自転車代わりに使うにはちょうどいいでしょう。このように本業とは少し違う分野へのチャレンジスピリットを持ったスタッフがいるというのも当社の大きな強みです。
ここまで話すともう分かっていただけると思いますが、当社には挑戦する意志を持った方にぜひ来てほしいですね。常に向上心と好奇心を持ち続ける当社に応募すること自体が挑戦だと感じている人がいるとしたら、それは大歓迎です。その意志を大切にして挑戦してきてください。お待ちしています。
弊社もいつか社長が私から次の世代に変わる日が来るでしょう。でも、別に銅像を作って欲しいとは思いませんし、極端な言い方ですが、私のことを忘れてしまっても構わないんです。ただひとつお願いしたいのは、当社のこういう精神だけは継承し続けて欲しいと思います。
最近の話ですが、当社の社是を新たに制定しました。それは「道理再来」としました。
「道」は先程も話した「武士道」です。高いプロ意識を持って基本を忠実にこなし、向上心を忘れないという精神です。
「道理」は人が行うべき正しい道です。いつも正直に、良心が痛むような行為はしない。損得ではなく善悪で判断して行動できる人としての正しい判断基準を持つことです。
「再」は私たちの生業であるリサイクルそのものですが、震災からの「再生」「再興」の意味合いも含んでいます。
そして「来」。これは「未来・将来」を意味していますが、もうひとつの意味としては「将来、子どもたちが入社を夢見る企業になろう」というものです。
現状では、まだ子どもたちが夢見る企業になったと思ってはいません。でも、自分たちの挑戦次第では、会社の未来を自分たちが理想とする姿に変えていくことができると思っています。